2026年10月01日

歯が欠けてすぐに歯医者に行けないときは、次の3点が基本です。
①患部や欠けたかけらを触りすぎず清潔に保つ
②欠けたかけら・抜けた歯は乾かさず牛乳や歯牙保存液に浸して持参する
③瞬間接着剤で付けるなどの自己処置は避ける
痛みがなくても放置は禁物で、欠け方や症状によって「今すぐ」「数日以内」「早めに」と受診の目安が変わります。この記事でわかることは、次の内容です。
- 欠け方・症状別に、自分のケースがどのくらい急ぐべきか(緊急度の切り分け)
- すぐ行けないときに自宅でできる正しい応急処置と、欠けたかけら・抜けた歯の保存方法
- やってはいけないNG行動・放置するリスク・受診の目安(休日夜間の相談先を含む)
本記事の応急処置・保存方法・受診の目安は一般的な情報であり、実際の診断・治療方針・適応は診察のうえ歯科医師が個別に判断します。
症状や状況により対応は異なり、効果や結果を保証するものではありません。
まず確認|歯の欠け方・症状で「急ぐ度合い」が変わる
歯が欠けたときにまず確認したいのは、自分のケースがどのくらい急いで受診すべきかという点です。
欠け方や症状によって「早めに(目安1〜2週間以内)」「数日以内」「今すぐ(当日中を検討)」のどの対応が必要かが変わるため、あらかじめ自分の状態を確認しておくと、その後の応急処置や受診タイミングの判断がスムーズになります。目安となる区分は、大きく3段階です。
- 小さく欠けて痛みやしみがない場合は、比較的緊急性が低いケースです。
- 大きく欠けて断面が鋭い、冷たいものや温かいものでしみる、強い痛みがある場合は、数日以内の受診が望ましい状態です。
- 歯が折れた、ぐらつく、神経(赤みやピンク色の点)が見える、完全に抜けたといった場合は、当日中の受診を検討したいケースです。
いずれも目安であり、実際の緊急度や治療の必要性は歯科医師の診察を経て判断されます。
迷うときは、様子を見続けるより早めに歯科へ相談することをおすすめします。

小さく欠けた・痛みやしみがない場合
前歯の端が少し欠けた、奥歯の一部が薄く欠けたといった、エナメル質のわずかな欠けで痛みやしみを伴わないケースは、他の症状に比べると緊急性は比較的に低いと言えます。
ただし、無症状だからといって歯自体に問題がないとは限りません。
欠けた断面から段階的にむし歯が進行したり、欠けが広がったりする可能性もあるため、目安として1〜2週間以内には受診しておくと安心です。
放置している間に断面が舌や頬を傷つけてしまうこともあるため、早めの相談が望ましいでしょう。
大きく欠けた・断面が鋭い・しみる・強い痛みがある場合
エナメル質の内側にある象牙質にまで達するような大きな欠けや、冷たいもの・温かいものでしみる、噛むと強い痛みがあるといった症状がある場合は、数日以内の受診が必要です。
象牙質は神経に近い層のため、症状が出ている状態を放置すると、痛みが強くなったり、むし歯や神経への影響が進んだりすることも考えられます。
まずは次の章で紹介する応急処置で刺激を避けながら、数日以内を目安に歯科医院の予約を取ることをおすすめします。
歯が折れた・ぐらつく・神経が見える・抜けた場合
歯が大きく折れた、明らかにぐらついている、断面に赤みやピンク色の点(神経)が見える、あるいは歯が完全に抜けてしまったといった場合は、当日中の受診が必要な緊急性の高いケースです。
日本歯科医師会や日本外傷歯学会の一般的な考え方では、神経が露出している状態や、歯がぐらついている状態(動揺)、完全に歯が抜けてしまった状態(脱臼)は、時間の経過とともに歯を元に戻せる可能性が低下します。
過度に不安を感じる必要はありませんが、できるだけ早く歯科医院へ連絡し、指示を仰ぐことが望ましいでしょう。
すぐ歯医者に行けないときの応急処置(自宅でできること)
すぐに歯医者に行けない状況でも、自宅でできる応急処置はあります。
主なポイントは、患部を清潔に保ち触りすぎないこと、刺激を避けること、鋭い断面から粘膜を守ること、出血があれば圧迫止血することの4点です。
いずれもあくまで一時的な対応であり、根本的な治療には歯科医院での受診が必要です。
応急処置をしたからといって受診を先延ばしにせず、前の章で確認した目安に沿って早めに歯科医院へ相談することをおすすめします。
具体的には、次のような対応が挙げられます。
- 欠けた部分・かけらを触りすぎない
- 口をぬるま湯で優しくゆすぎ、患部を清潔に保つ
- 痛み・しみがあれば、冷温の刺激や硬い食べ物を避ける
- 痛みが強ければ、市販鎮痛薬を用法用量を守って使用する
- 断面が鋭ければ、歯科用ワックスなどで一時的に覆う
- 出血があれば、清潔なガーゼで数分間圧迫する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
患部・欠けた部分を触らず、口の中を清潔に保つ
欠けた部分を舌や指で何度も触ると、細菌が付着したり、欠けがさらに広がったりする要因になり得ます。
気になっても、できるだけ触れずに過ごすことが基本です。食後は、ぬるま湯で優しく口をゆすいで患部を清潔に保つとよいでしょう。
冷たい水がしみる場合は無理に使用せず、ぬるま湯を使ってゆすぐようにしてください。
痛み・しみへの対処(市販鎮痛薬・刺激を避ける)
痛みが強いときは、市販の鎮痛薬を用法用量を守って使用する方法があります。
あわせて、冷たいもの・熱いもの・甘いものなど刺激になりやすい飲食物や、硬い食べ物を避けることも大切です。
欠けた側で強く噛まないようにし、患部を直接温めることも避けてください。
これらはあくまで症状を一時的に和らげる対応であり、痛みの原因を根本的に取り除くものではない点に注意してください。
鋭い断面で頬・舌を傷つけないための一時的なカバー
欠けた歯の断面が鋭くとがっていると、頬の内側や舌を傷つけてしまうことがあります。
このような場合は、市販の歯科用ワックスや歯の応急処置材で断面を一時的に覆う方法があります。
覆ったワックスなどが外れた際は、誤って飲み込まないよう注意してください。
なお、次の章で説明するとおり、瞬間接着剤などを自己判断で断面に使用することは避けましょう。
出血しているときの止血
歯ぐきや口の中から出血している場合は、清潔なガーゼやハンカチで患部を数分間、そっと圧迫してください。
多くの場合、圧迫を続けることで出血は落ち着いていきます。
圧迫しても血が止まらない場合や、出血の量が多い場合は、早急な受診が必要なサインと考えられます。
様子を見続けず、できるだけ早く歯科医院や休日夜間の相談先に連絡してください。
欠けたかけら・抜けた歯の正しい保存方法
欠けたかけらや抜けた歯を正しく保存しておくことは、再接着や再植(元の位置に戻す処置)の可能性を残すうえで重要です。
基本は「乾燥させない」「水道水で洗ったりこすったりしない」「牛乳や歯牙保存液に浸す」の3点です。
日本歯科医師会や日本外傷歯学会の一般的な考え方によれば、抜けた歯(脱落歯)を乾燥させてしまうと、歯根の周りにある歯根膜組織が壊死し、再植の成功率が著しく低下します。
また、欠けたかけら(歯冠破片)も乾燥すると接着強度が落ちるため、どちらも乾燥を防いで保存することが重要です。
保存の可否や実際に処置できるかどうかは、状態や経過時間をふまえて最終的に歯科医師が判断します。

歯根(根の部分)はできるだけ触らないようにし、元に戻せるかどうかは状態や経過時間により歯科医師が判断する点も覚えておいてください。
かけらは乾かさない|牛乳・歯牙保存液に浸す(水で洗わない)
欠けたかけらや抜けた歯を持参する際は、乾燥させないことが基本です。
乾燥は、再接着や再植の可能性を下げ得る要因のひとつとされています。
日本歯科医師会の情報(テーマパーク8020)によると、欠けたかけらは乾くと組織の水分が失われて破片の接着強度が落ちたり変色したりするため、牛乳や生理食塩水、歯牙保存液に浸して保存することが推奨されています。
(なお、歯が根ごと抜けた場合は、歯根膜細胞を保護するために牛乳や保存液への保管が必須となります。
)水道水に長時間つけたままにしたり、汚れを落とそうとこすり洗いしたりすることは、かえって組織を傷める可能性があるため避けてください。
歯が丸ごと抜けたとき|歯根に触れず、できるだけ早く
歯が完全に抜けてしまった場合は、歯の頭の部分(歯冠)を持ち、根の部分(歯根)にはできるだけ触れないようにしてください。
歯根には、再植の際に重要な役割を果たすとされる組織が付着しているためです。
時間の経過とともに、再植(元に戻す処置)の成功率は低下します。
元に戻せる経過時間の目安は状況によって異なりますが、時間が経つほど成功率は低下します。
保存液や牛乳に浸したうえで、できるだけ早く歯科医院を受診することをおすすめします。
やってはいけないNG行動
歯が欠けたとき、良かれと思って行いがちですが、かえって症状を悪化させたり、治療を難しくしたりするおそれのある行動があります。
ここでは、それぞれなぜ避けたほうがよいのか、理由とあわせて紹介します。
欠けた部分を指や舌でいじる・刺激する
気になって舌や指で触ってしまいがちですが、細菌の付着や、欠けがさらに広がる要因になり得ます。気になっても、なるべく触れないようにしましょう。
欠けたかけらを瞬間接着剤などで自分でくっつける
口腔内での使用を想定していない化学成分が粘膜を傷めるおそれがあり、後の適切な治療の妨げになることもあります。
応急的にくっつけたくなっても、自己判断での接着は避けてください。
患部をアルコールや消毒液で消毒する
一般的な消毒用アルコールや市販の消毒液は、口の中の粘膜や欠けた部分の組織を刺激し、かえって傷めてしまうおそれがあります。
口の中を清潔に保ちたい場合は、水やぬるま湯で優しくゆすぐ程度にとどめましょう。
抜けた歯の根元を強く洗う・乾燥させる
抜けた歯の根元(歯根)についた汚れが気になっても、強くこすり洗いしたり、乾いたまま放置したりすると、歯根の表面にある組織が損なわれ、元に戻せる可能性を低下させます。
汚れが気になる場合も、数秒程度、水道水でごく軽く流す程度にとどめ(こすらず)、乾かさないよう保存液や牛乳に浸してください。
いずれも、悪気なく行ってしまいやすい行動です。迷うときは自己判断で処置を進めず、歯科医院に電話などで相談することを優先してください。

放置するとどうなる?欠けを放置するリスク
歯の欠けを放置すると、無症状であっても内部で徐々に進行し得る点に注意が必要です。
むし歯・知覚過敏が進みやすくなる
欠けによって象牙質が露出すると、冷たいものや甘いものがしみやすくなったり、その部分からむし歯が進行しやすくなったりする場合があります。
無症状のまま経過することもあるため、しみる感覚がないからといって問題がないとは言い切れません。目安の期間内に受診し、状態を確認してもらうと安心です。
神経(歯髄)への影響・欠けや破折の進行
欠けが大きい、あるいは深い場合、時間の経過とともに神経(歯髄)に炎症が及んだり、欠けがさらに広がって歯が割れてしまったりすることがあります。
こうした状態まで進行すると、結果的に根管治療や、状態によっては抜歯など、治療の範囲が大がかりになる場合があります。
放置せずに早めに受診することで、重症化を防ぎ治療の負担を軽減できます。
どのくらいで歯医者に行くべき?受診の目安とタイミング
受診の目安は、症状の緊急度に応じて「今すぐ(当日中を検討)」「数日以内」「早めに(目安1〜2週間以内)」の3段階に分けて考えることができます。
冒頭で紹介した欠け方・症状の切り分けと合わせて確認すると、自分がどのタイミングで受診すべきか判断しやすくなります。
実際の緊急度は症状や状態によって異なるため、迷うときは時間を置かず歯科医院や休日夜間の相談窓口へ連絡してください。

今すぐ受診を検討すべきサイン
歯が抜けた、大きく折れた、神経(赤みやピンク色の点)が見える、強い痛みや腫れがある、出血が止まらない、歯がグラグラ揺れているといった場合は、当日中に受診すべき状態です。
こうした状態は、時間が経過するほど治療が難しくなる傾向があります。
過度に不安になる必要はありませんが、できるだけ早く歯科医院へ連絡し、状況を伝えて指示を仰ぐことが望ましいでしょう。
数日以内・早めの受診が推奨されるケース
大きく欠けて冷温でしみる、断面が鋭いといった症状がある場合は、数日以内の受診が望ましいとされています。
一方、小さく欠けて痛みやしみがない場合でも、目安として1〜2週間以内には受診しておくことをおすすめします。
無症状であっても、内部では進行している可能性があるため、症状がないことを理由に受診を先延ばしにしないことが大切です。
夜間・休日ですぐ行けないときの相談先
夜間や休日で歯科医院が開いていない場合は、地域の休日・夜間歯科診療や、かかりつけ歯科医院の時間外案内、自治体・歯科医師会が設けている相談窓口などを利用する方法があります。
かかりつけの歯科医院がある場合は、留守番電話や公式サイトに時間外の案内が記載されていることもあるため、まずは確認してみてください。
緊急性が高いと感じる場合は、様子を見続けず早めに相談先へ連絡することをおすすめします。
歯科ではどんな治療になる?(欠けの程度別の一般的な治療)
受診後の治療は、欠けの程度によって考え方が変わります。
小さな欠けであればコンポジットレジンで補うことが多く、大きな欠けや神経に近い場合は被せ物や、状況によっては神経の処置(根管治療)が検討されます。
神経に達する深い破折の場合は根管治療や、状態によっては抜歯が選択肢になることもあります。
いずれも、適応や具体的な治療方針、費用(保険診療か自由診療かの区別を含む)は症例により異なり、診察のうえで歯科医師が判断するものです。
ここで紹介する内容は、あくまで一般的な目安として参考にしてください。
- 小さな欠け:コンポジットレジン(歯科用プラスチック)で補う治療が検討されます
- 大きな欠け・神経に近い欠け:被せ物や詰め物、場合により神経の処置(根管治療)が検討されます
- 神経に達する・破折が深い場合:根管治療や、状態により抜歯が検討されることがあります
- 抜けた歯:状態や経過時間により再植が検討されることがあります
早めに受診し、欠けたかけらや抜けた歯を正しく保存しておくことで、選べる治療の幅が広がる場合があります。
ただし、これは可能性のひとつであり、すべてのケースで同じ結果になるとは限らない点にご留意ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 欠けたかけらは瞬間接着剤で付けてもいいですか?
自己判断での使用は避けてください。口腔内での使用を想定していない成分が粘膜を傷めたり、後の適切な治療の妨げになったりすることがあります。かけらは保存し、歯科医院に持参してください。
Q. 歯が欠けた当日は食事や歯みがきを普通にしても大丈夫ですか?
刺激を避けながら、いつも通りのケアを続けることが目安です。欠けた側で硬いものを噛むことや、冷温の刺激が強い飲食物は控え、歯みがきは患部を強くこすらないよう優しく行ってください。
Q. 欠けた歯の治療は保険適用になりますか?
治療内容によって保険診療と自由診療のどちらになるかが異なります。使用する材料や治療方法によっても変わるため、詳しくは受診時に歯科医院へご確認ください。
Q. 子供(乳歯・永久歯の生え変わり期)の歯が欠けた場合も同じ対処でいいですか?
基本的な応急処置の考え方(触りすぎない・保存する・自己処置を避ける)は共通しますが、乳歯や生え変わり期は永久歯とは異なる配慮が必要になる場合があります。できるだけ早く小児歯科や歯科医院に相談してください。
Q. 患部が痛むときに市販の虫歯痛薬やデンタルペーストで穴を塞いでもいいですか?
自己判断で穴を塞ぐ処置を行うことは避けてください。一時的に痛みが和らいでも根本的な原因解決にはならず、薬剤や充填物によって歯科医師による状態確認や治療が難しくなるおそれがあります。
痛みが強い場合は市販の解熱鎮痛薬(内服薬)を服用し、早めに受診してください。
まとめ
歯が欠けたときは、まず欠け方・症状で緊急度を切り分けましょう。
すぐに歯医者に行けない場合は患部を清潔に保ちながら刺激を避け、欠けたかけらや抜けた歯は乾かさず牛乳や歯牙保存液に浸して保存することが基本です。
瞬間接着剤での自己処置や放置は避け、症状に応じたタイミングで受診してください。
痛みがなくても、内部では進行している可能性があります。
迷ったときは様子を見続けず、早めに歯科へ相談することをおすすめします。
なお、本記事で紹介した応急処置・保存方法・受診の目安はあくまで一般的な情報であり、実際の診断や治療方針は、歯科医院で診察を受けたうえで歯科医師の判断に従ってください。
参考文献
- [1] 日本歯科医師会 テーマパーク8020「歯の外傷」 (https://www.jda.or.jp/park/lose/gaisyou_02.html)
- [2] 日本歯科医師会 テーマパーク8020(歯とお口の総合情報) (https://www.jda.or.jp/park/)
- [3] 日本外傷歯学会(JADT)ガイドライン (https://www.ja-dt.org/guidline.html)
- [4] 神奈川県歯科医師会「歯牙脱臼」 (https://www.dent-kng.or.jp/hagaitai/119/)
監修者情報
アムール歯科新宿 院長
森戸珠美(もりと たまみ)歯科医師
略歴
- 1999年3月、都立八王子東高校卒業後、鶴見大学歯学部に入学。2005年卒業後、同大学歯学部付属病院の総合歯科・保存科に勤務し、う蝕(むし歯)・歯周病治療を専門に研鑽を積む。
- 2007年に医療法人社団真歯会理事に就任。
- やなぎさわ歯科クリニック、高月病院、常盤矯正歯科医院、昭島デンタルクリニックでの勤務を経て、アムール歯科新宿の院長に就任。一般歯科の臨床経験を基盤に、保存修復・歯周病治療を担当している。
- 医師紹介ページ
- https://amour-d.com/doctor/
